音色の相対音感(過去の研究活動)
東京大学大学院工学系研究科・峯松研究室(音声工学)の研究に協力していました。共著論文には「音声の相対音感」(2006) 「音声の構造的表象を通して考察する幼児の音声模倣と言語獲得」(2007) などがあり、日本赤ちゃん学会で発表したこともあります(「音響的普遍構造の臨床応用への可能性 ~赤ちゃんは親の声の何を真似るのか?~」2010 )。
当初は、音声言語の理論的考察として発表しましたが、その後、理論が精緻化されたことと、音楽の絶対音感(音高)との違いを明確にするため、音声の中の『音色の相対音感』という形での説明を試みています。これは、人間の脳に関する議論ではなく、人間を取り巻く環境の中の「音」「言語音」の議論です。
近年、この理論について、大学研究者だけでなく、ことばの発達に課題を抱える児童生徒への指導・支援を行っている教育関係者や、ディスレクシアのお子さんを育てるお母さん方が関心を持ってくださっています。『自閉症は津軽弁を話さない リターンズ』松本敏治著(2020年 福村出版)でも取り上げられました。
2004年4月、日本小児科学会は「乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です」と緊急提言しましたが、音環境から実臨床にアプローチする方法論は、20年近く経った今もまだ確立されていません。テレビ・ビデオ・スマホの使用時間のみに注目するのではなく、言語音そのものが持つ特徴や、親子間や子ども間の音声コミュニケーションのあり方を、音声を物理面から捉える専門家と共に検討することで、新たな知見が得られる可能性があります。
当事務所 代表の西村は、医療者の英語教育や臨床研究支援に長年取り組み、現在は保健師として、乳幼児健診や母子健康手帳交付などを行う地域保健の現場にも関わっています。過去の研究活動を地域保健の実践活動に活かしていきたいと考えています。